自分は忘れっぽいと言いながら何気に覚えてる奴

昔から、色んなことに関して忘れっぽい。物忘れだとか約束事や決まり事を忘れたりだとか。

うろ覚えの過去の出来事を、脳内で辻褄合わせようとして捏造、事実と思い込んでいることもしばしば(後にその時に居合わせた人と思い出を語らっているときに指摘される)。

まぁ誰にでもあることだし特別なことではないんだが。

ある人物との出会いにより、他人から見た忘れっぽい自分というのを見た気がした。

そいつは私より年下の男。元上司で今は友人である。

奴と業務とは関係ない雑談をする中で、何度か言われたことがある言葉が『俺とゾノさんって似てるよね』。

最初はそんな事ないだろと、思っていたのだが。だんだんと、似てるなぁという面を垣間見ていくことになる。

そのひとつが、物忘れ。

頼んでおいたことは必ずといっていいほど忘れる。忘れないように、とメモを残すも、そのメモごとどこかにやって何だったっけとなる。

指摘すると、俺何でもすぐ忘れちゃうんだよね、である。

ただ。忘れるだけなら似てるなぁ、とは思わない。


ある休憩時間のこと。奴が自販機でジュースを買っているときに、たまたま居合わせた私が奢れよと冗談を言った。

自分のジュース代金分しか持ってきてないと奴が言うので、じゃあ次は財布ごと持って来いやと半ば脅した(勿論、冗談半分)。

翌日。またも自販機の前で居合わせた。私の顔を見るなり奴は、財布ちゃんと持ってきたよ、と。

何のことか?と私がきょとんとしていると、持って来いって言ったじゃんと奴は言った。覚えていた。業務上で言ったことや別件で頼んだことはものの数十分で忘れる奴が。

そんなどうでもいいことは覚えてんのに何で他のことは忘れるの!と、思わず言って、あぁこいつ私だわ、と思った。

奴と似ていると思ったところは、自分は忘れっぽいのだと公言することを、本当に忘れてしまったときの為の保険にしている、というところだ。

考えてみれば、奴は業務上で本当に重要なところは覚えていた。後からでもいいもの、手間はかかるがすぐさま改善しなくても差し支えはないもの等を、忘れた、とよく言っていた。

私も似たような節がある。というか、実際そうだ。

ただこれは、本当に忘れっぽいということが前提である。実は全部覚えてマースとかだとただの計算だ。

忘れっぽい。だから、保険をかけておく。こんな心配がございますよと予め。

また、忘れっぽいのだと思い込むことで、覚えていない自分を甘やかしている。許されると思っている。
記憶が曖昧になって、あれなんだったかなぁ聞き辛いなぁということでも、忘れっぽいと公言していれば『またか』で済まされる、と。

自分にとことん甘い。そんなところが、似ているなぁと思った。




忘れっぽいに関してだけではない気がするな。

私ってこうなのだ、とマイナスな面を公言されたら、そのマイナスフィルターを通して相手を見てしまう。
そこまで気にしていなかった一面でも、若干なりとも浮き彫りになる。

自分に自信がないだとか、期待されたくないという気持ちの現れなんだろうか。

そんなことないよ!と否定されたい意図の発言も中にはあるんだろうし一概にはそうと言えないか。

ただ。否定されたいのは自己満足の為で。相手が自分をどう見るか、と考えたときに、私は自分から否定されたい一面というのを言いたくないなぁと思った。